斬-the black side blood union-

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「ううあぅあぅあ~」
「お、お、お、お~」
「ん……んぅ」
 俺とアユミと美空は3人並び、マッサージチェアにぐりぐりされていた。
 至福。
 湯上がりの体に疑似指圧マッサージがとことん効く。
「ねぇ羽村、ミックスジュース買ってきて」
「自分で行け。なぁアユミ、コーヒー牛乳買ってきてくれ」
「自分で行って。あのね美空ちゃん、わたし謙虚だからヤクルトでも我慢する」
「…………」
 最終的に言い出しっぺが立ち上がることになった。
 美空は億劫そうに財布を開き、買ってきたコーヒー牛乳とミックスジュースをそれぞれ
投げ渡してきた。
 蓋を開け一口ごくり。喉ごし最高。いやはや休日ってヤツは最高に素敵だ。
 気分の良くなった俺は、アユミに暇潰しを振ってみた。
「……アユミー。なんか面白い遊びないかー」
「遊び? うん、あるよある。ちょっと待ってね──」
 言いながらがさごそと鞄を漁る。づぽん。その向こうで美空がミックスジュースの蓋を
開けた。
「じゃじゃーん! 高瀬アユミ考案、楽しい楽しい8色オセロだよっ!」
 うぼぁ。
 俺と美空が同時に萎えた。
 しかしアユミは堂々とショッキングピンクのオセロ盤を掲げ、「8色とか超すごいよ
ね! もうなんか、次元の壁を越えそうだよね!」とかゴキゲンしている。
「「 …………。 」」
 美空と視線で会話した。
 まぁ試しに1ゲーム、やってみますか。



「そういえば美空ちゃん。銀一くん、最近見ないけど元気してるの? 白2つゲット」
「ああ、元気元気。なんたって暇を持て余して出張行くくらいだからね。出掛け先はどこ
だっけなぁ……確か、赤木市だったと思う。羽村、紫4つもらうわよ」
「げ……容赦ねぇなあ。と、そういや赤木市って言えば何だっけ。あの有名な“緋雨”が
いる街だっけか? おっし、ピンク1列ぜんぶ頂き」
「うわっ!? は、羽村くんなんてことするの!? もうピンクだめっぽいよ!? しょ
うがないなぁ……残った黄色に賭けよ。ところで“ひさめ”ってなに?」
「“緋雨の魔女”ってのはね、とんでもない女呪術師よ。古参の狩人サイドなんだけど、
呪いの根幹定義がいまだにハッキリしてないっていうか、あんまりにも強力すぎて敵か味
方かわかんねーっていうか。
 一部には生き神だとか魔法使いだとか言われてるわね。ちなみに住まいは赤木市じゃな
くて藤咲市」
「そうだっけ? まぁ何でもいいけど美空、お前の黒、死にかけてるぞ」
「白も結構やばい感じだねぇ」
「げ、何よこれっ!? ちょっと羽村、あんた何気に嫌がらせみたくジメジメ囲みに掛か
ってんじゃない!?」
「へ、今頃気付いたかバーカ。そーれっ、白・色・殲・滅!」
「で、黒も全滅だよっ」
「ひああああっ!? ちょ、あんたたち何!? オレンジが秒殺された時点でなんか怪し
いと思ってたけど、裏側で組んでるんじゃないの!? 羽村!? さっきからなんでやた
らケータイ弄ってるわけ!? 誰とメールしてんのよ一体!?」
「んあ? んなもんアユミに決まってんだろ、ブワァカ」
「ちなみにわたしは、見付からないように机の下でいじってました」
「むっきぃぃぃいいいいいいいッ!?」
 がしゃーんと盤がひっくり返される。
 8色オセロは意外と面白かった。



「次は高瀬アユミ考案、楽しい楽しい下手投げダーツの時間だよっ!」
 キラキラ笑顔でアユミが宣言。
 銭湯を舞台にした第2回戦が始まったはいいが。
「やたら投げにくいわねぇ……」
「そもそも、なんで下手投げ限定なんだ?」
「下手投げダーツだからだよっ!」
「う~ん……あ、10点ゲット」
「へぇ、やるな美空」
「ふふん、当然じゃない」
「おし、俺は大きく50点狙いでいくかな」
「うわっ、さすが羽村くん、すごいねがんばるねへ、くちゅんっ」
「っておい!? さりげなく肩を押すなアユミ! 美空! 無事かッ!?」
「うあああっ!? 刺さってる、刺さってる!? 誰か抜いてぇぇぇええっ!!」
「美空ああああああああ!?」
「あ……ゴメンナサイ」
 アユミが申し訳なさそうに謝って、下手投げダーツは終了した。



「次は羽村リョウジ考案、楽しい楽しいピンポン水銀の時間だぜっ!」
 しゃきーん!
 嘘くさく爽やか爽やかした俺を見やって、美空が半眼で聞いてきた。右手に包帯。
「ルールは?」
「まず誰とも知れぬ人の家に行って、呼び鈴を押す」
「うん、それで?」
「その隙を突いて、井戸にポツリと水銀を垂らし、」
「帰れっ!」
「なに!? わざわざ奥さん呼び出す辺りとか、最高にスリル満点だぞ!?」
「誰がやるか! 死ね! ウサギ連弾ッ!」
「ぼふっ!? 野郎! 喰らえ、下手投げダーツ連弾!」
「いいい痛い!? 本当に冗談抜きで痛い!? ぐぬぅ、ウサギ連弾連弾!!」
「甘い! オセロ盤ガード!」
「固っ!? ショッキングピンク固っ!? きぃぃぃいぃ! ウサギ連弾連弾連弾連弾!」
「ふ、2人とも落ち着いて! めっちゃお婆さんたちがみてるよ!」
 ピンポン水銀は未遂に終わった。
「落ち着けって、言ってるでしょおおおおおおおおおっ!!?」
「うおおおぉ!!」
「ひきゃああああっ!?」
 アユミの連続ロッカー投げ。効果はばつぐんだ




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