斬-the black side blood union-

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 雨の団地を、1人で歩く。
「………」
 傘の色は黒。昨日智花さんに借りたものだ。
 わたしには少し大きかったけれど、雨に濡れないという点だけはとても優れていた。我
ながら似合ってないとは思うけど。
「………………」
 静かな団地だった。
 雨さえ降っていなければ、わたし1人分の足音でさえ反響しそう。
 建物が古いのか、壁はこれ以上ないくらいに煤けていて、ベランダの鉄柵だってどこの
家を見ても塗装が剥がれ、ボロボロに錆びていた。
「……あっ」
 ばしゃん
 そんな風にぼーっとしてたのがいけなかったんだろう。おもいきり水溜まりを踏み抜い
てしまって、スカートの裾がほんのり濡れた。
「うぅ……」
 そもそもアスファルトがでこぼこなんだ。きっと建物と同じで古いんだろう。あちこち
に水溜まりができていて、ところどころ穴まで空いてたりする。
 そんな団地の奧にはタイルの地面。使われていない広場を抜けるとわたしの腰の高さく
らいの段差があって、水溜まりに気を付けながらそこを降りると、もっと舗装の粗い地面
になっていた。
 黒い傘を少し持ち上げて、目の前に広がった光景にわたしは少し、釘付けになってしま
った。
「────」
 ほんのり翳った雨空の下、透けた陽光が差し込む奥地。
 無人の廃墟が建ち並ぶ。
 ──現代遺跡。
 本当に、誰もいない、団地の奧の廃墟群。もとは工場の群れだったのだろう。キラキラ
と水溜まりが乱反射するその一角はこれ以上ないほど錆びきっていて、10年たってもこ
のまま放置されていそうだ。
 右を見ると大きな小鳥河。
 アスファルトの隙間からは植物まで生えていて、この廃墟群の空気をいっそう遺跡じみ
たものに見せている。
 ……まるでオアシスみたいだな。
 錆びながらキラキラ輝く廃工場の間を歩き、そんな感想を抱いた。
「アユミちゃん、こっち!」
 ふと顔を前に向けると。
 廃墟群の最奥に当たる工場の入り口から、智花さんがわたしに手を振っていた。



 傘を畳んで1歩足を踏み入れると、鉄さびの匂いが鼻を掠めた。
「──―」
 別段何も変わったところなんて見当たらない、普通の廃工場だ。
 ただ広いだけの空間があって、砂埃だらけで、隅の方によくわからないドラム缶やブ
ルーシートなんかが積まれているだけの。
 中心にはパイプ椅子がいくつか寄り添っていて、たぶん、そこが人の座る定位置なんだ
ろう。
 転がっていた空き缶を爪先で押しやりながら、智花さんはパイプ椅子に積もっていた埃
をぱんぱんと追い払って、私に差し出してくれた。
「いや~ほんと汚い場所で悪いけどさ。ま、座ってよ」
 言われた通りに腰を下ろすと椅子の足が軋んだ。
 ボロボロの廃工場とガラスのない窓から見える外の雨を見回す。
 状況は簡単だ。
 今朝先生たちと話したすぐ後に智花さんから電話が来て、「一緒に遊ばない?」と誘わ
れたのでここに来た。
 とてもいいタイミングだったと思う。
 わたしはこれから智花さんの行動を24時間監視するという役目を与えられているし、
なら、隠れてこそこそ見張るよりもこうやって顔を合わせて一緒にいた方が気が楽だ。
 監視なんて言い方は――好きじゃない。
「………」
 聞こえるのは雨の音と、すぐそばで椅子にもたれ掛かって智花さんが片耳聞きしていた
イヤホンの漏音だけ。
 智花さんは昨日話した時と何も変わらない。
 ほんのり染めた長い髪に、少しラフだけどよく似合う格好で、だけどどこか遠くを眺め
ている目に懐かしんでいるような微笑が混じっているのを私は見付けた。
「あの……ここ、何なんですか?」
「ん~?」
 のんびりとわたしの方を向いて、智花さんは意味深に笑った。
 笑ってから、よく分からないことを言ってきた。
「宝物」
「……?」
 どういう意味だろう。
 口に出して聞き返すよりも先に、智花さんは両腕に顔を埋めて、なんだか嬉しそうに言
った。
「ここはね、私たちの秘密基地なの。たまり場とも言うかな。とにかく、そんな感じのヤ
ツなのさ」
「秘密……基地?」
 言われてみれば、確かに秘密基地っぽい。団地の奧の廃墟群の、そのまた奥の廃工場。
「ああ、そっか──」
 ようやく気付いた。
 パイプ椅子の数は全部で5つ。
 そのひとつひとつに座って笑い合う、智花さんとその友達の姿を幻視した。
「………」
 ──ここだ。あの5人組の写真。あれはここで撮ったものだったんだ。
「……いっつもここで遊んでたんだ」
 静かに。
 儚むような声で、この場所の主の1人は言った。
「始めにここを見付けたのは俊彦と流星の2人組でね。あいつら不良ちゃんだからさ、授
業サボってはここに逃げ込んで、飽きるまでだらだらしてたらしいよ」
 ──それが高校1年の4月の話、と智花さんは付け加えた。
「その次にここに辿り着いたのは、なんと2人のクラスの学級委員長。
 信士っていうんだけどね。メガネの似合うカタブツ君。あいつはたびたびいなくなる不
良2人を目の仇にしてて、いつか絶対反省させてやるってのが目標だったみたい。
 だから2人を尾行して、そうしてここに辿り着いたんだって。信じられる? チャリで
原チャを追っかけたんだよ? しまいにゃすっ転んでメガネ割れたってさ」
 楽しそうに笑う横顔。
「そんな犬猿のはずの不良と学級委員が、気が付けば、いつの間にかここで一緒にコーラ
飲んでコンビニパン食べてたんだって。
 たぶん流星のせいだね。吉田流星。あの脳天気な顔見てるともう怒る気も失せちゃって、
いつの間にか気怠く笑ってる自分に気付かされるんだ。あいつはそういう不思議なやつだ
から」
 チビの金髪バスケ部でね、と智花さんは教えてくれた。
「次は私。どうってことない話なんだけど、その頃の私は学校帰りにあちこち放浪してお
もしろそうなもの探すのが日課だったんだ。
 そして見付けた。不良と学級委員長の、おかしな3人組。あんまりにも楽しそうだった
もんだから、もう勢いで混ぜてもらうことにしたんだよ。
 最初は信士と俊彦がメーワクそうな顔してた。だって男だけの秘密基地に、名前も知ら
ない女1人だもんね。だけど流星だけは笑って歓迎してくれたよ。そしたらもう、決まり
なんだ。そうやって私は仲間と居場所を手に入れた。そして、最後は──」
 と、そこまで語って智花さんは目を伏せた。
 ……わたしは知っている。最後の1人は2ヶ月前に亡くなっていて、もうこの世にいな
いんだ。
「──ま、ともかくそんな感じの場所ってわけさ。私たちのたまり場にようこそアユミち
ゃん。歓迎するぜっ!」
 Vサインを向けてきた智花さんは笑顔だったけれど。
 その笑顔にわたしは少し、戸惑ってしまった。
「あの……智花さん?」
「お? なになに」
「わたし……本当に、ここに来てよかったの?」
「ほぇ?」
 ……だって。
 ここはきっと、とても大切な場所なんだ。ただの廃工場だけど、特別な場所。そんな場
所にわたしなんかが来てよかったのだろうか。
「──ほう?
 なるほど。阿呆の話に聞いた通り、なかなか気の利く良く出来たお嬢じゃないか。うむ、
やはり阿呆とは違うな、阿呆とは」
「え」
 突然聞こえた言葉に、驚いて振り返る。
 見ると。
 工場の入り口に、誰かわたしの知らない人が立っていた。紺色の雨ガッパをすっぽり被
った、見るからにアヤシイ人。
「……うぉい、待たんかいそこの駄メガネ。どこの誰様が阿呆だって?」
 ぴく、とこめかみを引きつらせて智花さんが返した。
「ふむ、やはり自覚症状なしか。まぁ気にするな、どうせ誰もお前を責めたりはしない。
大衆はただ黙って道化を嘲り、影で哀れみ笑うかな。あえて指摘してやるのもまた友情だ」
「うわぁ……いろいろ言い返したいとこだけど、まずその馬鹿あやしい雨ガッパ脱いでか
ら言いなさいっての。見なよ、私のアユミちゃんが怯えてるじゃない」
「失礼。
 初めまして高瀬アユミさん、話は智花から聞いている。俺は──」
 ばさ、と雨合羽を脱いだその人は、皺ひとつない学生服に身を包んでいた。
 長身で、銀のメガネを掛けた、とても凛々しい高校生。
「──美濃信士だ。よろしく」
 優雅に微笑んで、紳士的に右手を差し出してきた。
 わたしはびっくりしながらその手を握り返す。
「あ、高瀬アユミです。よろしく──お願いします」
 うむ、と信士さんが頷くように笑って、短めの握手は終わった。雨合羽を綺麗に折り畳
みながら信士さんは続ける。
「俺のような未熟者に気を遣わなくていい、敬語もいらない。キミの可能な限り楽にして
くれ。その方がこちらとしても助かる」
「はぁ~……信士、カタい。そりゃ敬語にもなるっての」
「む? 何を言ってる、俺はこんなにも気さくだぞ」
 はっはっはと似合わない声を上げてみせる信士さんに、智花さんは額に手をあてて「あ
あ、ダメだこいつ」と呟いた。
「ところで智花。まだ俊彦とサルは来てないのか?」
「不思議なことに、まだ来てないよ。
 あいつら相手に時間厳守なんてまず無理だろうから、集合時間は2時間前ってことにし
てあるんだけど」
「なるほど。だが想定の範囲内だ。やつらにとっては予定は未定、という不安定状態こそ
がそもそもの予定通りなんだろう」
 さて、と信士さんはパイプ椅子に腰を下ろし、鞄から缶ジュースを3本取り出した。そ
のうち2本を智花さんとわたしに投げ渡して、リラックスするように脚を組んでから言っ
てきた。
「時間ギリギリに慌ただしくするのは不良の仕事だ。
 常識人たる我々は、余裕を持ってのんびり待つとしようじゃないか。何、慣れれば待つ
のも悪くないものだよ」
 なぁ? と笑いかけてきた信士さんの物腰はなんだかとっても大人っぽくて、わたしは
自然に笑い返していた。
 ──なんとなく。
 信士さんの家は、大きな武家屋敷なんじゃないだろうか。そんな気がした。



 ほどなくして、1台の原付が工場に入ってきた。
「ふっはぁ、酷い目にあった」
 その人はびしょ濡れの制服を着ていて、ほんとさっきまでプールで泳いでたんじゃない
かってくらいの格好だった。
 エンジンを止め、ヘルメットを外して、シートの下からタオルを取り出しぐしゃぐしゃ
と頭を拭いた。薄黄色のタオルを肩に掛けてから、ようやくこっちに来て右手を上げた。
「よ。待った?」
 それに答えるのは信士さん。
「遅い。2時間30分の遅刻だ」
「わりぃわりぃ。ま、許してくれ。ほら、メシ食おうぜメシ」
「お、さっすがトシ。気が利くね~」
 パンパンに詰まったポリ袋に、智花さんがパタパタと駆けていく。
 ガサゴソと野良猫みたいに袋を漁る智花さんを見て、トシさんが苦笑いした。
 中林俊彦さん。
 短めの髪を逆立てた、ちょっと不良っぽい人。だけど全然恐い感じじゃなくて、どっち
かっていうとスポーツやってそうな人だ。
「……む? 俊彦、サルは一緒じゃないのか?」
「ああ、それなんだけどよ。流星のバカ、なんか昨日から電話繋がらねーんだよ。お前ら
なんか知らね?」
 トシさんが智花さんと信士さんを見回すけど、どっちもはてなマークで首を横に振るだ
けだった。わたしはそんな光景を見て、少し俯いてしまった。
 ──流星さん。
 吉田流星さんは……今朝、死体で発見されたんだ。
「ま、流星の気紛れはいまに始まったことじゃねーでしょ。それよりアユミちゃん、どれ
食べる?」
 智花さんが両手いっぱいに、それからもうひとつ口に銜えながら持ってきた大量のコン
ビニパン。その物量には圧倒されるしかなかった。さすがに買いすぎじゃないかな……。
「はッ!?」
 だけど、その中に見覚えのあるパッケージを見付けてびびびっと来た。
「と……智花さん。それ……」
「んにゃ? これ?」
「そう……それ」
  白銀 しろがね のスウィートブラックカレーパン。
 それを震える手で受け取って、戦々恐々と見下ろした。
 ああ、思わぬ所で出会ってしまった。忘れていた。そういえば、今日が待ちに待った発
売日なんだ。行書体が輝いて見える。
「そ。おーけ、遠慮せず食べてね。みんなの分もぜーんぶトシの奢りだから」
「マテコラ、俺はアユミちゃんにしか奢らねー」
 言って、俊彦さんがわたしの前に立った。
「おす、俺トシ。よろしくなアユミちゃん」
「あ……はい、よろしくお願いします。あの、このパン、ほんとにもらっていいんです
か?」
「とーぜん! ジュースもあるぜ、今日はまとめて俺の奢り! もう好きなだけ食べてい
いから!」
 グッと親指を向けられる。
 うん。
 やっぱり楽しい人だ。
「うっはー! んだよ智花、めちゃくちゃ可愛いじゃん! どういうことだよおい!?」
「でっしょー!? でもあんたにはあげないかんね。私たち、1週間後に結婚するから」
「ぶはッ! どっち!? 一体どっちが男役!?」
 すごいハイテンションな2人だった。
 そこへすすすと信士さんが寄ってきて、わたしに囁いた。
「アユミ嬢、決して目を合わせるな。あれは害獣だ、むやみにエサを与えてはいけない。
あと会話感染で悪い病気を染されるぞ」
「吹き込むな駄メガネ! 本体カチ割るぞっ!」
 なんか右手を大きく振り上げ、「><」こんな顔で智花さんが叫んだ。
 その瞬間、びきり。
 信士さんのメガネに亀裂が入った気がしたのはきっと目の錯覚だろう。
「ほう? 阿呆、吠えたな。急用が出来たからちょっとこっちへ来い」
「へ? いやあの。信士さん? あちし女よ? 知ってる? ねぇ分かってるよね?」
 ずりずりずりと、智花さんが物陰に引きずられていく。
 信士さんの背中はなんか鬼オーラを纏っていた。燃え上がる「天」の字まで見えたよう
な。
 ガオゥン
 急に静かになったと思ったらものすごい轟音が上がって、工場全体がビリビリと震動し
た。
「フ。直撃は勘弁してやろう、間接的に死ね」
 呟きながら物陰から出てきた信士さんは、何故か右拳を撫でていた。
「あー、そういやあいつんち道場なんだよな。何の武道かは知らねーけど」
「へぇ~……そうなんだ」
 俊彦さんの解説に、わたしは素直に感心してしまうのだった。
「痛ぇ……超耳痛ぇ……耳元でドラム缶殴るとかマジ鬼畜……」
 歩み出てきた智花さんはフラフラ。
 それを背景に、信士さんが静かに言った。
「まぁ、常にこんな感じというわけだ──というより、今日はサルがいない分静かすぎる
くらいだな。だから気兼ねせずくつろいでくれ。正直、気を遣うだけバカらしい」
 なるほど。わかりました。
「「「 !? 」」」
 その時、突然さっきよりも派手な轟音が上がって、わたしたちは一斉にそっちを振り返
った。ドラム缶の山が崩れたらしい。場所は、ついさっきまで智花さんと信士さんがいた
物陰だった。
 智花さんがあと数秒出てくるのが遅かったら、今頃下敷きになっていたことだろう。そ
んな考えに至って、みんなしてぞっと青ざめる。信士さん以外は。
 信士さんは何故か品定めするような冷静さで智花さんと惨状を見比べて、さっきまでと
何も変わらない調子で静かに告げた。
「ふむ、惜しかったな。俺としたことが的を外すとは」
「えぇ──っ!?」
 確かに間接的だった。



 雨は止まない。
 廃工場に集まったわたしたち4人は、だらだらと夕方頃まで雑談ばかり続けていた。
「あ、そうだ智花さん」
「ん?」
 大事なことを忘れていた。
 わたしはこれから24時間、智花さんのそばにいなくちゃいけないんだった。
 と、いうわけなので。
「あの……今夜、泊めてもらえませんかっ」
「「 !? 」」
 ──何故か。
 へ? と疑問符を浮かべた智花さんの向こう側で、信士さんと俊彦さんが、雷に打たれ
ていた。
 ずささささーとこっちに駆け寄ってきて、深刻にまくし立ててくる。
「……アユミ嬢、一体何があった。今日繋がりを得たばかりの友人では役不足かも知れな
いが、ひとつ俺に話してみてはくれないか?」
「わかった、何も言わなくていいぞアユミちゃん。泊まるところがないんだろ? 保護者
に追い出されたとかで」
「ああ、それならひとつ現代社会の穴場を伝授しておこう。漫喫だ。漫画喫茶に泊まるん
だ、いいな? あこは漫画パソコンのみならず、店によってはドリンクバーなんかも付け
てくれるし安ホテル代わりに使える」
「金がないんなら貸すよ。だから早まるんじゃない、人間は最後まで自分を捨てちゃいけ
ないんだ。最後まで生き抜いた人間だけが救われる、それが浮き世ってモンだ」
「そう、この不良の言う通りなのだよ。いいか? 人生というのはだな──」
 そんなよく分からない説得に、わたしは首を傾げながら聞き返した。
「あの……どういうことですか? 智花さんの家は何かまずいとか? 家の事情があると
かで」
 しかし2人は何故か気不味そうに、目を見合わせる。
「いや……その、だな」
「そうじゃない。そうじゃないんだけど……ほら」
 ごごごごごごご。
 そんな効果音が聞こえる。智花さんの、背中から。
「両刀使いなんだ」
「りょうと……う?」
 言われた言葉を反芻する。
 両刀使い。
 智花さんが。
 ──本当に、びっくりした。
「そ、そうなんですか!? 智花さん、強いんですか!?」
「なに?」
「え?」
 だって、両刀使いっていえば二刀流のことだ。
 二刀流。
 わたしと同じ、二刀使い。
 知らなかった。きっと学校の部活か何かなんだろう。剣術。智花さん、剣士だったんだ。
 いいな、すごいな。見てみたいな、智花さんの試合──
「そっか……で、でも! わたしだって、一騎打ちなら敗けないんだから……!」
 なんだかぼうぼう燃えてきた。
「……おい、信士さん? あれは一体どういうアレですか?」
「……まずいぞ俊彦。アユミ嬢、流星以上の天然だ」
「……マジかよ……そんな人類実在してたのかよ」
「……言うな。俺も新発見で戸惑っている」
 まだ2人は、背後でよく分からないことを呟き合っていたけれど。
「おお……っ」
 ごごごごごごごと地響きを立てる智花さんの背中に、一流剣士の風格を感じて恐れおの
のくわたしなのでした。




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