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斬-the black side blood union-
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逃げる。逃げる。逃げ惑う。
夜の街は広すぎて。
刺された腕からどくどくと流れ出す血をアスファルトが飲み込んでいく。
逃げる。逃げる。逃げ惑う。
とっくに息が切れていて。
恐怖で爆発した脳はバカになっていた。
背後に迫る影に追いやられ、泣きながら噴水広場を目指した。
あたしは駆り立てられる猫だった。
きっと簡単に殺されてしまう。
助けて。
助けて……恐いよ。恐いんだよ。誰か助けて。
「はぁ──! はぁ──ッ!」
腕の中には金属バット。
宝物。
そうだ、絶対にホームランを打つんだ。
あの2人にすごいねって褒めてもらうんだ。
死にたくない。
死にたくなんてないよ。
けど、公園に逃げ込んだ瞬間、急に足に力が入らなくなって転んでしまった。
カラカラとバットが転がっていく。
「ぁ……!」
手を伸ばす。
だけどバットは茂みの中に転がっていってしまった。
足を見ると、深々とアイスピックが突き立っていた。
立ち上がれなくなったあたしに、じわじわと近寄ってくる。
「子供がね……好きなんだ」
そいつの手があたしの服に触れる。
「小さな子供を捕まえて殺して壊し尽くす……それだけが僕を癒すんだ。ああいや、これ
も誰かが決めた予定表上の役割に過ぎないんだけどね。
キミは予知能力って信じるかい? 別に信じなくてもいいよ、ただ僕はそれに従うだけ
だから」
乱暴な手に押さえつけられる。
こうして、長い長い夜が、始まってしまったのだ。
あたしは顔をしかめ、恐怖に震え、涙を流しながら呟いた。
「……い」
──痛い。
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