ヘヴンズアンダーグラウンド

 友達が死んだ。わりとあっけない死に方だった。
「…………」
 今年の寒さはなかなか厳しい。
 うなだれながら、人混みさえ枯れ始めたゴーストタウンのような街を抜けていく。
 アスファルトの感触は痛々しいくらいに堅い。
 ふと横断歩道で立ち止まり、私は新年を迎えたばかりの青空を見上げた。
 流れていく雲が綺麗だ。
 陽光を透かしてカーテンのように輝いていた。
 ところで去年、とても仲の良かった友達が死んでしまったのだが。
「…………」
 いい子だった。
 病弱だったけど。
 あいつ1人を置き去りにして、この街は何事もなかったかのように新年を迎えてしまっ
た。
 去年は最低の1年だった。
 いろんなものを失った。
 その中でも一番重い喪失が、あの、静かな笑顔の愛らしい親友。
 現実の死に際して私が思うことは少ない。
 とりあえず勿体ないとは思う。
 ただそこにいるだけで周囲が和やかになる子だった。あの子が先何十年、いろんな人を
和ませていたことを思うととてもとても勿体ない気がするのだ。
 頑張って勉強していた時間も。
 結局何の役にも立たず失われるなんて、あまりにも勿体なくて理不尽だと思う。
「…………」
 でも、もう、遅いんだ。
 彼女は土に埋葬された。
 涙を流す季節さえ過ぎ去った。
 あれから静かに時間が流れ、新しい年を迎え、『もう大丈夫です』と、私は笑うことが
できるまでに回復した。
 右手に持った紙袋。
 くだらない、何の価値もないように思える参考書。
 勉強なんて大嫌いだ。
 だけど、これで私は未来を築く。
 あいつの分まで──なんてことは考えない。ただ、私は、私のためだけに進むのだ。
 そこに感傷を挟むのはなんだか失礼な気がしていた。
 黄泉だとか。
 供養だとか。
 そんなものは、生き残った者が自己満足するための偶像に過ぎない。
 ただ受け入れる。
 この喪失を。
「…………」
 信号機が青に変わる。
 私は新しい年を歩き始めた。
 ありもしない天国の真下で。